1 ルネサンス

1 ルネサンスとヒューマニズム

 ルネサンス(Renaissance、再生の意味)とは、ギリシア・ローマの古典文化の再生を意味する言葉で、文芸復興と訳されてきた。

 ルネサンスは、14世紀にイタリアで始まり、15世紀以後西ヨーロッパに広まったが、単にギリシア・ローマの古典文化の復興にとどまらず、人間精神の革新を求める文化運動であった。

 ルネサンスの根本精神はヒューマニズム(humanism)である。ヒューマニズムの原義は人間主義と訳される。

 十字軍以後、都市が成立・発展し、市民の活動が盛んとなると、市民達は封建制度や教会の束縛から解放された人間らしい自由な生き方を求めるようになった。

 中世の人々の生活は、カトリック教会が定めたさまざまな規制によって束縛されてきた。 カトリック教会は、来世に天国に召されることを人生の目的と説いたが、市民達は人間のもつ欲望を肯定し、現世をより良くより楽しく生きることが人間らしい生き方であると考えた。このような人間中心的な生き方が人間主義(ヒューマニズム)である。

 そして市民達は、その人間中心の新しい生き方の手本を、彼らと同じように都市生活を営み、しかもキリスト教の束縛に縛られないで自由に生きた古代ギリシア・ローマの人々の生活・考え方に求め、彼らの残した文芸の作品を収集し、それを深く研究し・復興することにより、新しい生き方を追求しようとした。そのために14世紀以後まずイタリアで 古代ギリシア・ローマの文化の収集・研究・復興が行われた。このような動きもヒューマニズムと呼ばれるが、人文主義と訳されている。そしてヒューマニズムの精神に立つ、ルネサンス期の文人・学者を総称してヒューマニスト(人文主義者)と呼んでいる。

 ルネサンスが、まずイタリアで始まった理由としては次のようなことがあげられる。
(1)十字軍以後、東方貿易によって都市が発展し、市民の活動が盛んであったこと
(2)イタリアはローマの故地であり、古代ローマの遺跡などが多く残っていたこと
(3)ビザンツ帝国の滅亡前後から、ビザンツの学者達がイタリアに移住してきて、ギリシア文化が伝えられたこと
(4)フィレンツェのメディチ家やローマ教皇が学者や芸術家を保護したこと
などがあげられる。  

 イタリア=ルネサンスの中心となった都市はフィレンツェである。フィレンツェは毛織物業と金融業で栄え、14世紀初めには人口10万人に達したヨーロッパの大都市の1つであった。大富豪のメディチ家が市政を握り、多くの学者や芸術家を招き、文芸や美術を保護・奨励したのでルネサンスの一大中心地となった。

 しかし、のちにフィレンツェの政治が混乱すると、16世紀の初め頃からイタリア=ルネサンスの中心はローマやヴェネツィアに移った。




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