『ぽとりと落つる』

 

 今日は卒業式。女の子二人の後ろを追うように、私も学校への道をとぼとぼ歩いていた。

「卒業式と言えば?」

 前を行く二人の片割れ、三つ編みをした聡明そうな子が何かを期待する顔をして連れに問いかけた。盗み聞きをするつもりはなかったが、数歩の距離では聞こえてしまう。

 う〜ん、なんだろう。

自分に聞かれた訳でもない質問の返答をぼんやりと考えていたら、相方の女の子はおかっぱの髪を揺らして「紅白饅頭?」と答えた。

 あぁ、いい。あのお饅頭、ただの縁起ものかもしれないけど、結構美味しい。でも、相手は気に入らなかったようで、睨み付ける目が光っている。

「さ、桜!」

 慌てて捻り出した代案が眼鏡にかなったらしく、賢そうな瞳の少女の怒りがおさまって何故かこちらまでホッとした。

 話を聞いていると、「卒業式といえば桜」という図式は嘘っぱちだ、という暴論を展開しているようだった。

途中で通り過ぎた公園の桜は遅咲きの品種らしく、まだ固く蕾を閉じていた。時々私は、あの中には花以外のものも詰まっているのを勿体付けているかのような感覚を覚えることがあった。

 学校が見えてきた。何度も何度も通った校舎を眺め、感慨深げな面持ちの卒業生をそれ以上見ていられなくなり、隣を擦り抜けて一人校門へ急いだ。

「でも、泣いちゃうんだろうな」

 追い越す瞬間に聞こえた呟きに、胸が締め付けられる。桜のように蕾を鮮やかに開かせ、立派に卒業していく彼女達が羨ましかった。

 

いったい、私は蕾をどこで落としてしまったのだろう?

 
★後書き★
 『はらはらと散る』のリンク話です。
 暗めの話になってしまってすみません。
 こちらも突発的に書きたくなって創ったお話です。
 卒業式というハレの日には、こういう陰の顔もあるのではないかなと思います。

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