「伯爵の子」あとがき

 

2005年1月8日脱稿。
Folio vol.8 「100年」号に掲載されたものです。
Folio編集部から「100年」にちなんだ作品か、もしくは
およそ百年前の文学作品を元ネタにしたものを、というお題をいただいて書きました。
元ネタはブラム・ストーカーの「吸血鬼ドラキュラ」(1897年)です。

今回、十数年ぶりに再読しましたが、いやあ、
「ドラキュラってこんなんだったっけ?」とずいぶん驚きました。
あいつ、昼日中に外をうろつき回ってるんですよ。
それに鉄砲と刃物で普通に殺されてるし。
しかもトドメを刺すのはヴァン・ヘルシング教授じゃないし(教授は眺めてるだけなんです)。
映画やら何やらで、だいぶ誤解してたんだな、と気付かされました。

でもいちばんびっくりしたのは、瀕死状態の患者を救うべく、
教授が見舞客から片っ端に輸血するくだりです。血液型なんか調べもしない。
それもそのはず、「吸血鬼ドラキュラ」が上梓されたのは1897年。
血液型の概念が発見されたのは1901年。
伯爵だって原因不明の腹痛に脂汗流す夜もあったんじゃないかと思うのです。

 

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