「王子の見た景色」あとがき
2004年9月5日脱稿。
Folio vol.7 「見る」号に掲載されたものです。
この話の前に、生まれつきの全盲者が視力を得てパニックに陥る話を書いたのですが、
書き上げた直後、オリバー・サックスの短編小説「見えていても見えない」
(ハヤカワ文庫NF 『火星の人類学者』収録)の存在を知り、がっかりして没にしました。
で、代わりに書いたのが本作です。
本作の主人公遮照王子は晴眼者であり、ときおり外の世界を窺い見たりしています。
しかし長らく盲人としての生活を余儀なくされていた人間がいきなり目隠しを外されて、
果たしてすぐに馴染めるのだろうかという疑問があります。
「見る」能力があり、「見る」という概念を持ってはいるものの、
視力は衰えているでしょうし、遠近感も掴みづらいのではないか、と。
しかしその辺りをくどくど書き連ねても野暮になるかと思ったのでご都合主義に任せました。
実際のところ、こんなふうに上手くはいかないと思います。