Welxome to IX WORX.  
   
   
News & Topics As long as we support it, a genre of a computer as a hobby will never vanish in the future!
2010.06.22
(Written on June 14)

USER'S SIDE が商号を変更し,今後法人向けPC事業は終了し,ゲーム向けショップとして専念するそうだ。
ザ・コン,高速電脳に続き,秋葉原から本格的PCショップがまた姿を消すことになった。
同店で法人向けPCを担当されていた技術者の方々は,ユニットコムに移り,法人向けの専門事業部を継続する旨告知されている。

個人的にUSER'S SIDE とは長らく御縁があったため残念の一言だ。
これで秋葉原には,我々エンスージアストの琴線に触れるような製品を,部品単位できめ細かく販売してくれるショップは事実上姿を消してしまった。マイスペックコムが頑張ってQuad Opteron 向けのM/Bやベアシステムの販売を継続して下さっているが,すでにQuad Opteron用はHPCクラスタベースのクラウドシステムを前提とした5セット売りのみとなっている。
(Head node x1 + Compute node x4 という需要が多いのだろう。)

昨今の市場動向を見るに,「シングルノードでの性能を向上させる」ことなどもはや無意味と化したのかもしれない。ハイエンドPCと銘打って,決して安価でない価格で自信たっぷりに販売されているショップブランドPCを見ても,所詮はCore i7 のトップエンドにたかだか8GBのRAM,(静音性・消費電力の点で)使用環境の快適性度外視のDual あるいはQuad GPU 構成に,まずまずの価格帯でまずまずの性能のMLC-SSDのオンボードRAID でお茶を濁したストレージシステム,内部構造が頑張っている割にイマイチスマートとは言えない外装,電源,入力装置をかき集めたと言った代物に過ぎない。しかも,どのショップのどの製品も似たり寄ったりで,「良く売れる最大公約数的」構成でしかない。差別化は悲しいかな電子街秋葉と異なる秋葉カラーのノベルティグッズであったりする。

この進捗・変遷の著しい時代にあって,回顧的戯言をのたまう私こそナンセンスの極みかもしれないが,ほんの数年前であれば,こうした最大公約数的構成は「だれにでも作れるつまらないもの」として揶揄された。そしてそうした揶揄の声が上がるたび,志あるショップが,一部性能をとことん尖らせたり,コスト度外視のモンスターマシンを構築する等,新しくて面白いPCのあり方を示しては話題を読んだものであった。「どうやればそこで示されたあり得ない性能を凌駕できるか」を考えることが楽しみだった。

それが今はどうか。まるで看板の違う同じ店が延々と並んでいる。M/BはASUS,電源はANTECかEnermax(悪い選択とは思わないが…),グラフィックスは応予算でSapphireか玄人志向といったところだろう。ELSA,Leadteck を支持するのは,早くも「通の仕業」となっている感がある。SSDはX25-Mか。そしてストレージコントローラは多くの場合ICHとくる。

このあたりの部品の,セグメント的にはハイエンドに属するのものを集めて,ハイエンドPCの完成である。
本当にそうか?

ハイエンドというからには,否,少なくとも自らをハイエンドユーザーやエンスージアストであると自覚するものが「ハイエンド」と呼ぶからには,性能・機能・使用快適性・耐高負荷性のいずれの点においても一定以上の性能を,しかも高いバランスで実現したものでなければならいだろう。昨今のモデルは,確かにグラフィクスの点では間違いなくハイエンドである。高い描画性能を要求するソフトウェアは次々に際限なく登場するので「無駄なまでに」とはいわないが,申し分なく高性能だ。

その一方で,CPUは,確かにシングルスレッドでこそないが,限られた帯域をコアが食いつぶし合うシングルソケットのシステムだ。早い話がCPUという部品はシステムに1個しか搭載されていない。つまり,描画性能のわりにはあまりにも中央演算処理系がお粗末だというのだ。マルチCPUシステムの快適さは実のところを実際にそれを使ってかなり負荷の高い処理を文字通り並列に処理してみなければ解らないが,シングルCPUのシステムと比較すると確実に優れている。

 


Dual CPUs システムと,Dual Cores システムの差は負荷が高ければ高いほど現れる。特に,RAMコントローラを内包するCPUの場合はその差は大きい。私の駆るQuad Opteron システムは既に5年以上も前のアーキテクチャを採用している所謂骨董だ。しかし,2010年現在に販売されているデザインツールや動画編集ツールを複数同時に駆使してもおいそれとCPU負荷率は70パーセントを超えない。ベンチマーク以外の方法でCPU使用率を100パーセントにするには5年を経た今でも簡単ではない。

かつては,「この上ない高性能モデル」等と銘打たれるモデルは,やはり少なくともDual CPUs システムであった。自称エンスージアストまたはベンチマークマニアは,Supermicro や Tyan の動向に注意を払った。新製品が出るたびにどのような構成に詰めれば早くできるか,という話題に花を咲かせた。しかし今,Supermicro や Tyan と聞いて,???という向きも多いだろう。M/Bメーカーである事さえもはや知られていないかもしれない。「M/B ならASUS」,確かに間違ってはいない。事実,ASUS の製品は良いし,市場のニーズも良く把握している。XEON 向けのM/Bを比較していると,「使いやすいのはASUSか…」などとうっかり思ってしまうこともある。しかしながらASUS は,売れると言う意味で市場に適合した製品ではあっても,次の趨勢を読み説くのに適した製品ではない。すなわち,今の製品ではあっても次代を学べる製品ではないのだ。

Supermicro やTyan から新製品が出るたび,その新しくて不可思議な構成に「どうしてここがこんなふうになるのか?」と思ってしまうことが多々ある。しかし,この10年,彼らが示した方向性は基本的に間違っておらず,時代の方がそれに追従した。よりラックマウント型の外装に実装しやすいボードレイアウト,ネットワーク機能の拡充,冷却装置の配置方法,ブレード型へのシフト,こうした要素は全て,「汎用システムによるクラウド型HPCクラスタ構築の容易化・一般化」へと結実した。まだ消費電力とサイズの問題は残るものの,デスクサイドにスパコンを置ける時代が現実に到来したのである。

こうしたシステムは,常に最大公約数的ではなく,高性能とは引き換えに癖が強く扱いにくいものであった。例えばDual CPUsシステムはとかくゲームには不向きであったし,サポート対象外とするゲームメーカーも未だに多い。しかし,エンスージアストの多くは,知恵を絞り,情報を交換し,動かないもの半ば無理やりを動くようにして,その知識と技術を磨いてきた。そして後進がそれに倣い,新しい自作PCの可能性と次の在り方を切り開いてきた。

今はどうか?買ってきてそのまま動く「ハイエンド」という名のPC。安易にカタログスペックに満足し,思考錯誤する事を忘れ誤報を妄信する。

 


それが別に悪いことなのではない。PCはあくまでも道具だ。便利で優れた道具が安く売られている。だからそれをそのまま使う。至極当然のなりゆきだ。しかし,少なくとも秋葉原にPCを求めるユーザーがそれに終始してしまっては趣味のPCは確実に終わる。否,すでに終わりは始まっている。

今後そのあり方は大きく様変わりするであろうが,それでもPCという道具がなくってしまうことは今後もないだろう。なんらかの形で存在し続けるはずだ。しかし,それだけでよいのか。

創造することは面白いことだ。思考錯誤は苦しいし,それが趣味なら金もかかる。
だが,得られるものも大きい。創造性,新しいアイディア,誰もが考え付かない発想,それらを生み出すのは興味と思考錯誤,失敗と発見がもたらす経験である。

過剰な国際競争の中で,物作りの継続そのものが困難となっているが,それでも我々が物作りから遊離して経済活動を成り立たせることは今しばらくは不可能に近い。しかも,従来型の物作りから,発想型・創造型の物作りへとその転換を否応なしに迫られている。そのような状況にあって,世界においても高い水準を維持してきた日本のシステムインテグレート分野の一翼であったともいえる趣味のPCと,そこから派生するより高度なコンピューターシステムが,最大公約数的封鎖性の中でその衰退・枯渇を待つのみというのは,あまりにも残念極まりない事であるように思う。

システムの在り方が,現在のクライアント・サーバー型のネットワークから,クラウド型のネットワークに収斂されるにつれ,多数のCPUまたは演算システムを実装するノードを集積し,性能密度を向上させる知識と技術,早い話が,ワークステーションやサーバークラスのシステムをインテグレートし,さらにそれを集約して集中管理する知識と技能が一層求められる。更には,その肥大化した演算能力を遺憾なく発揮するために優れたディスク・サブシステムを構築できなければならない。

こうしたことは,これまで秋葉原において名を馳せたプロショップが得意とする分野であった。USER'S SIDEをはじめ,高速電脳,若松通商,ぷらっとほーむなど名うてのプロショップである。これらのショップが提供するシステムやパーツを通して,我々後進も最大公約数的とは異なるシステムの存在を知り,それを学び,そして駆ることができた。

しかし,今こうした紐帯がまさに断たれようとしている。否,老舗のプロショップとして事実上唯一の存在となっていたUSER'S SIDEの商号変更・移転によって,その紐帯はもはや断ち切られてしまったのかもしれない。

 


このデフレ不況の中,高価な製品はまず売れない。高価で扱いが難しいとなればなおさらだ。
更に悪いことは,折角高価なものが売れても,高価そうに見えるものしか売れないということだ。

実際のところ,不況とは言いながらも600,000ほどするゲーミングPCがそこそこに売れているらしい。
しかし先に指摘した通り,それは最大公約数的に「早く見える」だけで,それだけのコストをかけるのならもっと早くできる場合が多い。事実,600,000あれば,巧くやればQuad Opteron システムを構築できる。同じ世代でCPUの数が4倍(無論,コア数でも4倍)となればその性能差は歴然だ。Dual CPUs に抑えて,機能面を充実されるに留めたとしても,バランスのとれた高性能で低ストレスなシステムを構築できるだろう。無論,性能はシングルCPUの比ではない。

だが,本当のところそれをやろうとする者は稀だ。
名だたるPC雑誌でさえ,Dual CPU システム用のM/B を紹介することさえ珍しくなってしまった。

(尚,性能比較について一言言っておくが,シングルスレッド性能のことを言っているわけではない。ここでいう性能とは,例えば,Eyefinity で複数のマルチディスプレイをグルーピングしつつ,3Dゲームをやりながら,地デジを録画しつつ,WEBでTwitter めぐりをしながら,メールを読み書きするような用途において,低ストレスな環境を提供するに足る性能のことである。くれぐれも誤解なきよう願う。こうした用途は荒唐無稽に感じられるかもしれないが,いままでの世代のシステムに不可能であったというだけで,慣れてしまえば日常的に可能な使い方であるし,正直便利だ。また,本稿ではややCPUの数の話に偏っている感があるものの,それだけではなく,各種IOとCPUないしRAMを接続するシステムバス幅の点にも関係する。Dual CPUs システムでは,各CPUにシステムバスがそれぞれ接続されていることも少なくなく,この場合,システムバスのバス幅は理論上に2倍ということになる。)

どうか,秋葉原から真に快適なPCを提案・提供できるプロショップが無くならないことを切に願う。
昨年夏,USER'S SIDE マルチスペースを訪れた時に目にした世界最小の静音・Dual XEON システム(勿論3Dゲーム可)は本当に見事であった。

USER'S SIDE の法人PC事業部を引き継いだユニットコムの新事業部の仮称は「新ユーザーズ・サイド営業部」だそうだ。
ユーザーズ・サイドの名が残ることは個人的にとてもうれしい。

私のごとき矮小なる人間にできることなど露ほどもないかもしれないが,しかし,私はやはりコンピューターが好きである。
今後,コンピューターやネットワークのありかたがいかに変わろうとも,やはりコンピューターを趣味とし続けたいと思う。
そのために,「新ユーザーズ・サイド営業部」を出来得る限り応援したい。

もし,この拙劣たる本稿を読んで,しかしこれに賛意を表してくださる方がいらっしゃるなら,是非一緒に応援して戴きたい。失われつつある趣味のPCを守り,そして昨今の大きな変化・変動の趨勢の中で新たな存在意義を見い出し発展させるためには,我々ユーザーが意識を高めていくよりほかないと私は考える。

 


市場の健全維持と発展のためには,業界の側の努力に加えてやはりユーザーの成長という要素が不可欠だからだ。

ユニットコムの新設法人事業部の担当者として御名前の挙がっている方々は,黎明期から今日までの秋葉原におけるコンピューター市場と技術的地位を確固として築いてこられた方々である。常に質の高いサービスを展開してこられた。

今という時は,こうした方々が長きにわたって築きあげ,提供し続けて下さった価値あるものを,今度は我々ユーザーが守り育てるべき時期であるのだと思う。ユーザーが価値を見失わない限り,趣味のコンピューターの存在意義は決して失われるものではないと私は信じたい。変化はやむをえないものであったとしても,その中に活路は必ず見出せるはずである。

くだらない洒落で恐縮であるが,当に「力を取り戻せ!,ユーザーズ・再度!!」である。乱文深謝。

 
2010.06.14 IX WORX Administrator
   
2010.03.01 【PC Lab.】「不思議な話-電源ボタン長押しでPCが再起動,原因は電源ボタンの押し方と離し方」を公開しました。
2010.02.05 【PC Lab.】「Windows 7 で Windows Calendar を使う方法」を公開しました。
2009.07.09 IX WORXサイトの公開を再開しました。
2009.05.06 My PCs記事内の記述を若干加筆訂正しました。
2009.04.24 まだまだコンテンツが少ないですが,楽しんでいただけると幸いです。
2009.04.22 IX WORXサイトを公開しました。
   



   
Contents  
: :  My PCs 我が家PC達の紹介と四方山話集.
: : PC Lab. 種々の機器やアプリケーションの使用感・小ネタなど.
   
   



   

 Links to Relative Sites |IX EducationDollghters