陌上桑


虹に駕かせ
赤雲に乗り
九疑の山に登り玉門の関を越え
天漢を渡り
崑崙の山に至れり
西王母にまみえ東王公に謁す
赤松子と交わり
羨門を訪れる
秘道を授かり精神を養い
霊芝の英を食らい
甘泉の水を飲み
桂の枝を杖つきて
かぐわしき秋蘭を佩ぶ
俗塵を離れ
宇宙の元気に遊ぶ
疾風の如くひらひらと身を浮かせ
またたくうちに
数千里馳する
寿きこと南山のゆるがざるが如し



□□意訳□□


虹にひかせた車で
赤い雲に乗り
九峰の山に登り玉門の関を越えて
天の川を渡り
崑崙の山へとやって来た
そこで私は西王母にまみえ
東王公に拝謁しよう
赤松子(せきしょうし)とよしみを通じ
 羨門(せんもん)仙人のもとを訪れよう
そして秘道を授かり精神を養い
霊芝(ひじりたけ)の英(はな)を食らい
甘泉の水を飲み
桂の枝を杖にして
かぐわしい秋蘭を佩び
俗世間を離れ
宇宙の根源で自由に遊ぶよ
疾風のようにひらひらと身を浮かせ
またたくうちに
数千里を走り抜いた
この空間で私は
ゆるぎない南山のように永遠を生きるのだ



タイトルの陌上桑(はくじょうそう)は、「昔、趙王が道ばたで桑を摘んでいる王仁の妻羅敷(らふ)を見初めて奪おうとしたが、羅敷が歌を作ってしりぞけたという故事をうたった長詩を起源とするもの」だそうです。

こちらは曹操 の詩のなかでもきわめつけに幻想的な作品。
何という壮大な夢想でしょう。まるっきりSFです(笑)
無限と、永遠……。
空間と時間の途方もないスケール感にクラクラと圧倒されてしまいます。
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